デュアルクラッチトランスミッション(DCT:Dual Clutch Transmission)


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最近の自動車技術の中でも、一際注目を集めているのが、デュアルクラッチトランスミッション。通称DCTと呼ばれているミッションです。ここではDCTと呼びますが、呼び名はいろいろあって、ツインクラッチシームレストランスミッションとも呼ばれています。

構造としては、名前の通りクラッチを2つ備えているのが特徴。自動車のためのトランスミッションの「究極の答え」として注目されており、ヨーロッパ車をきっかけとして現在急速に普及しているトランスミッションです。

自動車のためのトランスミッションの「究極の答え」 DCT

DCTがなぜ自動車のためのトランスミッションの「究極の答え」とされているのか?DCTの利点をあげると以下の通りです。

トランスミッションなんだから、ギヤ式は当たり前なのでは・・・と考えられますが、近年CVTというトランスミッションも広く普及しているので、あえてあげてみました。

「変速時の駆動抜けがない」というのは言葉に表すと簡単ですが、車が「走る」ことを考えると、この特徴はトランスミッションとしては最強の利点になります。F1チームなんて、トランスミッションの駆動抜けを極力少なくするために、変速スピードをミリ秒単位で縮める努力をしていますからね。

マニュアルトランスミッションの構造

DCTの構造の前に、DCTは基本はマニュアルトランスミッション(MT)の進化バージョンとも捉えられるので、MTの構造を図解でまず解説します。下図にMTの概念図を示します。

ポイントは、変速する前からそれぞれのギヤはセットになっていて、かみ合っているということ。それではどのようにして、トランスミッションで変速が行われているか説明します。

@エンジンの出力はクラッチを通して、そのトルクがトランスミッションのインプットシャフトに伝えられます。

Aインプットシャフトとオレンジ色のギヤは連結しているので、オレンジ色のギヤは全て回転します。

Bオレンジ色のギヤと水色のギヤはかみあっているので、水色のギヤも全て回転します。

C水色のギヤとカウンターシャフトは連結されておらず、ドライバーがシフトフォークをコントロールして、どのギヤで走行するか選択する。シフトフォークを動かすことで、水色のギヤとカウンターシャフトの間にある機構により、水色のギヤとカウンターシャフトが連結されます。

つまり、カウンターシャフトと連結している水色のギヤは常に1つだけ!

Dカウンターシャフトの回転がトランスミッション出力として、ディファレンシャルギヤ、ドライブシャフト、タイヤに伝わっていく。

以上が、MTの変速機構の簡単な説明です。クラッチはひとつしかないですよね。ここがDCTを考える上での重要なポイント。

デュアルクラッチトランスミッションの特徴

デュアルクラッチトランスミッションの特徴は、クラッチが2つあること。自分はトランスミッションが2つあるようなものだと捉えています。

今、6速のミッションを考えて、DCTを実現するためにミッションを2つ用意するとします。ミッション@には1速、3速、5速の奇数ギヤセットがあり、ミッションAには2速、4速、6速の偶数ギヤセットがあるとします。

車が停止状態から発進する時はミッション@の1速を選択。そのまま加速していって、今度は2速にシフトアップします。この時2速はミッションAに組まれているので、1速で走っている状態のときに、ミッションAのカウンターシャフトと2速ギヤをあらかじめ連結させておきます。

そう考えると、1速→2速へのシフトアップは、ミッション@のクラッチを切り離し、ミッションAのクラッチをつなぐだけで変速作業が完了します。

これがDCTの簡単な原理。ミッションを2つ用意することで、シフトアップ前に次に変速させるべきギヤとカウンターシャフトを連結させておくことが可能になり、クラッチの切り替えだけで変速できるということです。

クラッチの切り替えだけで変速が完了するので、駆動抜けはほとんど発生しません。

動作は上の通り複雑なコントロールが要求されるので、クラッチの切り離し/接続、ギヤの連結はすべてコンピューターとアクチュエーターで制御しており、ドライバーはボタンをぽちっ!っと押すだけで変速作業が完了します。

デュアルクラッチトランスミッションの構造

デュアルクラッチトランスミッションの構造は、上記で述べたように、本当にトランスミッションが2つあるかのような構造をしています。それでは図解で紹介します。以下にデュアルクラッチトランスミッションの概念図を示します。

フォルクスワーゲンのDCTを参考にして作成してみました。この場合は2本のカウンターシャフトを別軸にして書いていますが、インプットシャフトと同じように、同軸のDCTも考えることが出来ます。