自動車の走行抵抗


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最近は、自動車のスピードや見た目、ブランドよりも実用性というものが、日本人にとっては自動車選びの優先項目となっています。その実用性の中でも、どれだけ少ない燃料で、どれだけ長く走れるかという経済性、いわゆる燃料消費率、燃費という項目を自動車選びの優先事項として気にしている方もおられると思います。

燃費っていうのは奥が深くて、自動車のいろんな要素が影響してくる項目。その中でもここでは、自動車の運動に関係する項目として、自動車の走行抵抗につい紹介します。

自動車の走行抵抗とは?

走行抵抗とは、自動車が走る時の抵抗、つまり走りを邪魔する力のことです。

自動車を加速させるための力は、エンジンから発生した力がもとです。その力がドライブシャフトに伝わって、タイヤを回転させ、最終的に、タイヤが路面を押す力となって自動車を押す。これが自動車の加速力です。

走行抵抗は、自動車の走りを邪魔する力なので、自動車を加速させる力とは逆の方向に働く力。実際に自動車が加速するための力は次のようになります。

実際の加速力 = 加速力 − 走行抵抗

          

そんなの当たり前じゃんと思われるけれども、これはとっても大事なことです。いくらエンジンのパワーが大きくても、走行抵抗が大きければエンジンパワーの大きさは全く持って意味がない物となる。

走行抵抗の種類

走行抵抗とは実際にどのようなものか?自動車の運動を考えた場合の走行抵抗としては以下の4種類の抵抗があげられます。

それでは、それぞれの抵抗について説明します。

加速抵抗

自動車の走行抵抗のうち、いつ何時、ほとんどの走行条件時に働いてくる走行抵抗が加速抵抗です。加速抵抗とは、その名の通り、自動車が加速しようとすると働いてくる走行抵抗のこと。

物体が運動をする時の重要な法則としてニュートンの運動法則というものがあります。これは、ある質量を持った物体にある力を加えて、ある加速度で運動させようとする場合、その物体の加速度の大きさは、質量に反比例し、物体の加える力に比例するという法則。式にすると以下のようになります。

          

言ってみれば、自動車で加速しようと思えばより大きな力が必要になるというわけです。と同時に、車重を減らせばより少ない力で加速できるということも言えます。モータースポーツでマシンを速くするために、軽量化がとってもとっても大事な事であるのは、軽ければ少ない力、つまりエンジンパワーを大きくできな くても、加速力を上げることができるからというのも大きな理由です。

加速抵抗の考え方は、燃費走行にももちろんつながってきます。燃料をよりセーブして走ろうと思えば、大きな加速をしなければいい。一定の速度でず〜っと走り続けると燃費がいいと言われているのは、この加速抵抗の影響があるからです。

運悪く赤信号で車が停車した後、再発進する時、ギューンと一気に加速するよりも、徐々に徐々にスピードをあげていった方が燃費がよくなるのもこの加速抵抗の影響があるためです。

空気抵抗

空気抵抗とは、その名の通りで、自動車が空気の中を突き進むことによって発生する走行抵抗のことです。空気抵抗は、自動車の速度が低い内はそんなに大きなものではないけれども、自動車の速度が上がれば上がるほど巨大になり、問題となってくる走行抵抗です。

空気抵抗の値を式で表すと下の数式のようになります。

空気抵抗 = 空気密度×前面投影面積×速度の2乗×空気抵抗係数

前面投影面積というのは、自動車を前から見た時の面積のこと。空気抵抗係数というのは自動車の形によって決まる係数のことで、一般にはCD値とも言われて います。式を見るとわかるのですが、空気抵抗は速度の2乗に比例します。仮に時速100kmの車が時速200kmになったと考えると、空気抵抗は2倍では なくて4倍になるということです。

これはあくまでも、自動車が空気中を走行する場合の空気抵抗を計算するための式であることに注意。というのは空気抵抗は流体力学の分野で、流体力学というとモータースポーツ好きにとってはおなじみの力学。流体は奥が深い。空気抵抗も奥が深いんで す。

例えば、今ここでは空気抵抗はざっくり空気抵抗とひとまとめにして語っていますが、実は空気抵抗の中にも何種類かの抵抗に分けることができます。空気の摩 擦もあれば、圧力の影響もあるし、もっと深いところを見れば空気中を物体が進むことによって発生する渦の影響もあります。

自動車の空気抵抗の場合は、そのほとんどが車の前側と後ろ側で発生する圧力差とされています。なので空気抵抗の値を計算する数式は上のように表されると考えて下さい。

勾配抵抗

自動車の走行抵抗4種類のうち、一番直観でわかりやすいのが勾配抵抗だと思います。勾配抵抗というのは、簡単に言うと坂を登るときには平坦な道を走るよりも力がいるでしょ、ということを表した走行抵抗のことです。

誰もが子供の時から体験していることで、自転車で上り坂を登るときには、より大きな力で自転車をこがないと坂は登れません。そして坂の角度がきつくなればきつくなるほど、自転車をこぐ力は、より一層大きくなってきます。

これは、自転車を自動車に置き換えても同じこと。坂の角度がきつければきついほど、加速して登るためには力が必要。勾配抵抗は式で表すと以下のようになります。

勾配抵抗 = 車重 × 重力加速度9.8 × sin(坂の角度)

式を見ても、人が常日頃自転車に乗って坂を登るときに感じている現象がそのまま表されています。sinの値は0度の時が0で、角度が大きくなるにつれて値も増えていき、90度でsinの値は1になります。

イメージがつきにくいのは、勾配抵抗は車重にも比例するということ。つまり、自動車の重量が重ければ重いほど坂を登るときには、軽い自動車よりも大きな力が必要となります。

余談ですが、下り坂の時は勾配抵抗はどうなるのか?というと、勾配抵抗は、下り坂の時には、自動車が進む方向とは反対方向に働く抵抗になるのではなくて、自動車を加速させてくれる方向に働く力となります。これも、常日頃誰もが体験していること。自転車で坂を下るときには足でペダルをこがなくても自転車は勝手に進むでしょ。この場合は車重が重ければ重いほど、下り坂を下るときの坂による力は大きくなります。

転がり抵抗

自動車の走行抵抗のうち、空気抵抗よりも”なんですか?それ?”ととっつきにくい抵抗が転がり抵抗だと思います。どこから発生するかと言うと、転がり抵抗という名の通り転がる自動車部品から。転がる自動車部品と言えば、自動車と路面を結ぶただひとつの部品しかりませんね。タイヤです。

この転がり抵抗と言う抵抗はタイヤが転がることによって発生する走行抵抗のことです。CMでもよく見かけますよね。「転がり抵抗低減タイヤ」とか「エコタイヤ」とか「エコピア」とか。

転がり抵抗というのは、実はタイヤが転がることによって発生する抵抗をすべてひとまとまりにしたもので、転がり抵抗の中でもいくつかの種類の抵抗に分けられます。そのいくつかの種類に分けられる中でも、転がり抵抗の最も大きな要因となっているのが、タイヤが変形することによって生じる抵抗です。

自動車用のタイヤはほとんどが、ホイールにゴムタイヤが組みつけられていて、タイヤの中には空気が入っているという構造になっています。そのタイヤを自動車に取り付けて、地面に接地させるとタイヤのゴムの部分は自動車の荷重を受けるので変形します。

自動車で走る時は、タイヤは転がるので、荷重を受けて変形したタイヤは回転するたびに変形したりもとの形に戻ったりということを繰り返します。

この変形して元に戻る瞬間。タイヤのゴムが自動車が走ろうとするエネルギーを吸い取ってしまう現象が発生。厳密に言うとタイヤのような分子材料は粘性を持っているため変形するとその粘性があるおかげで、運動エネルギーが熱エネルギーへと変換されてしまいます。これが転がり抵抗の大きな発生要因です。

転がり抵抗の値は、いろいろな要因があるため、式で表すと、

転がり抵抗値 = 転がり抵抗係数×車重

というように、空気抵抗のように係数でタイヤの転がり抵抗特性を決めます。

その他の走行抵抗

自動車の運動を考えた場合、数式で表現できる走行抵抗は上記の4つです。しかし、自動車っていうのはさまざまな機械が連動しながら動くので、走行抵抗要因としては、まだまだ多数の要素が考えられます。

代表的なのは、エンジン出力からタイヤまでのトルク伝達経路の伝達損失(機械効率)であったり、ブレーキの引きずりなどです。

エコカーが注目される時代ですので、理論的なことばかりだけでなく、いろんな面を考えることが走行抵抗低減には必要かと思います。